ごあいさつ
第14回日本保健医療福祉連携教育学会学術集会
学術集会長 前野 哲博
筑波大学附属病院 副病院長
筑波大学医学医療系 地域医療教育学 教授
このたび、我々筑波大学が、第14回日本保健医療福祉連携教育学会学術集会を担当させていただくことになりました。このような貴重な機会をいただき、学会理事長、学会理事、ならびに学会員の皆様に深く感謝申し上げます。
我が国の保健医療福祉をめぐる環境は厳しさを増す一方で、急速に進む高齢化は社会的に大きな問題になっています。人びとが安心して健康に暮らしていくためには、地域包括ケアシステムに代表されるように、単なる患者の疾患の治療に留まらず、家族や地域住民、予防・健康増進、介護・福祉、生活環境などを含めた幅広い視点から暮らしをサポートすることが求められています。そのためには多職種連携・協働 Interprofessional work:IPWが必要不可欠であり、それを実現できる人材を養成する専門職連携教育Interprofessional education:IPEの重要性も高まっています。
このような背景を踏まえ、今回の学術大会テーマは「人々の暮らしと健康を支えるIPE・IPW~教室から地域へ~」といたしました。IPWの最終的な目標は、地域の人々の暮らしと健康を支える多職種の活動の質を向上することにあります。これからのIPEは、卒前教育の一環として大学などの教育機関の中だけでなく、実際の地域の現場で、患者・家族などの当事者と多職種との実際の関わりの実践を通して学ぶ機会を増やしていく必要があります。同時に、教育の対象も、学生だけにとどまらず、専門職としての生涯学習まで境界なく連続したものに発展させ、効果的なIPWにつなげていくことが重要になると思います。そこで、今回の学術大会では「教室から地域へ」をキーワードといたしまして、これからのIPE/IPWの在り方について議論を深めるものにしたいと考えております。
また、今回の新型コロナウイルス感染症の流行により、世界中が未曾有の危機に直面し、IPE、IPWも大きな影響を受けました。一方、オンライン化が急激に進むなど、このピンチがチャンスとなった側面もありました。このような状況下において、工夫を凝らしてIPE、IPWに取り組み、オンラインのメリットを初めて実感できたり、関係性を維持するために失われてはならない重要なポイントに気づいたりした場面も多かったのではないかと推察いたします。このような時期に開催される学術集会では、パンデミックへの対応も重要なトピックの一つにしたいと考えております。
開催形式については、第13回に続き、第14回学術集会も完全オンライン開催とすることといたしました。皆様が日ごろ取り組んでいる卒前IPE、卒後IPE、IPW、そして、このたびのパンデミック時の工夫等について、幅広く皆様のご経験を共有し、皆様の明日の活動につながる機会にできればと考えております。ぜひ多くの方々の参加をお待ちしております。